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・東南亜マレーポリネシア系メラネシア系の土着民:祖霊神霊崇拝の探訪見聞 ・自然信仰に関わる珍談、奇談 ・自然信仰全般、特に私が関わるアフリカ土俗死霊崇拝の逸話 ・信仰に関わる人々の生き様など
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20:45:13
私の生業が関係して居るのでしょうが、実行した「呪い」の相殺という意味合いで、不運に見舞われる事は茶飯事で御座います。所謂「呪い返し」。此方の題名に成って居る「人を呪わば穴二つ」の事であります。己の気色良い利益を優先するなら、後々、気色悪い代償を払って頂くよ……。相応、若しくは其れ以上の代価を支払え──というわけで「己の墓穴も掘って置け」という見えない世界からの御達しで御座います。

幸い今のところ、いかような霊的作業を実行に移しても、大きな痛手と成る様な「返し」は蒙って居りません。其れも此れも、己の身体に宿る死霊が擁護して居るのでしょうが、死後、彼方の世界にて、まとめて不便を蒙るのかもしれません。思い当たる理由と致しましては、此の世も彼の世も「陰と陽」そして「是と否」、極めれば此の単純な形態の循環で成り立って居るわけですから、片側だけで済ませて居っては調和が取れるわけ御座いません。必ず己で尻を拭く必要があると存じます。

ひと昔前、ゾンビ映画が流行りました。所謂「血塗れ」のスプラッター。アメ公お得意の人種差別丸出し映画で御座います。御蔭で「ゾンビ」と言うと化け物以外の何物でも無く、怖ろしい上に小汚い事この上無い印象を貼られてしまい、出処のアフリカやアフリカ系黒人、しまいにアフリカ系奴隷移民への蔑称にまで成ってしまいました。ゾンビという単語の語源は、ハイチのヴードゥーにあると考える読者が大半と存じます。しかし此れは大きな間違い。実際はコンゴ・バントゥー族の死霊崇拝から参った名称で、正確には「Nsambi:ンサンビ」と申します。バントゥー語で「死霊」の総称、死霊の最敬称でもあり、果ては死霊を「至高」なものとして扱う意味合いと成ります。此れを毛唐が云い易いよう「ゾンビ」と呼ぶように成ったわけで、確かに死霊には違い有りませんが、腐敗したまま蘇り、人肉を貪り喰ったりなぞという馬鹿げた事はありません。このように「ゾンビ」のイメージを捏造した結果、関係した映画で不審死や事故死が続出することになります。

死霊はあくまで己の名誉を守るため、我慢に我慢を重ねた上で遣られた以上の制裁を実行するため、二度と手も足も出ないような結果をもたらすわけで御座います。腐れた肉体のまま墓穴から這い出て、生ける人間を追いかけるという子供騙しの馬鹿はしませんが、死霊の中でも悪霊や邪霊は、相手を「殺して」当たり前。半殺し、生殺し、やや柔くて苦役や不運連鎖といった結果が待っているのであります。

二年前ほど前の話です。とある日本人女性から「悪霊が籠る呪物が欲しい」という相談を受けました。

処刑や惨殺や事故死なぞ、無念で逝った人物が往々にして悪霊や邪霊と成りますが、霊的な物事に長け、霊性を持ち合わせた人物でも扱いに困窮する霊を、疎く霊性も皆無に近い人物が受けてしまえば、云うまでも無く悪霊に喰われてしまいます。しかし其の女「西洋の黒魔術がどうのこうの……」「グノーシス派何やらが、どうのこうの……」と、何処から仕入れたのか、悪霊使役に通用しない西洋黒魔術の知識をひけらかし、自分にはそのような知恵があるので是非拝領したいと申すのです。私は眉に唾を塗りながら、怪しい視線で聞いて居ったわけですが、此の類の霊は可成り危険な上に金銭も張ります。事細かく、是々云々と丁寧に危険性や安くない金銭面の事情を説明すると、

「私を侮ってもらっては困る。金額は問題無し。研究に研究を重ね幾年月──」なぞと胸を張る始末。

私が「何を研究して幾年月なんでしょうか?」と訊ねると、じっと沈黙を貫き、真横に視線を向けたままでありました。

キューバへ赴く際、いけ好かない女という彼女への第一印象と、本当に悪霊を操れるものだろうか? という、少々悪賢い興味が己の内部で噴出しました。これは「もう一方の人格」である血約死霊の思考でもありますが、此の時ばかりは鼻高い女の意気込みが何処までのものか、試して遣りたいという己自身の願望も含まれて居りました。出発前、約束である前金を受け取りに行くと、女は「此の封筒に(約束の金額の)三分の一が入っています。残金は受け取りの時で良いですよね」と、一方的に封筒を握らせてきました。勝手に約束を反故して平然とする、人を小馬鹿にした態度。小狡賢い性質を目の当たりにして、この女を奈落の底へ落として差し上げようか、と憤怒に苛まれた次第で御座います。

キューバ到着後、私は依頼してあった「Ndoki:ンドキ」という悍ましい悪霊の籠った釜を術師から受け取りました。

「この釜は御前の下に残るだろうから、戻ったらNganga:ンガンガ──私の血約死霊の籠る釜──と相談し、Munanso:ムナンソ(霊の家)に据えるか、外に据えるか決めなさい……」

術師が不可解な事を言うので怪訝に思い、此の釜は或る女に依頼されたもので、その女が拝領するのだ──と再び説明するも、術師は意味深な笑みを浮かべ「其の女、今頃は自由が利かない身だ」と言い切ったのでありました。

爾後、釜を携え日本へ立ち寄りました。事前にメールで到着日を女に知らせ、引き渡しを提案しましたが、私がラオスへ戻るまでの四日間、遂に音沙汰なく、電話も繋がらないまま最終日と成ってしまいました。仕方なく、私は釜をラオスへ持ち帰り、二週間後、術師の指示通り死霊と相談したところ、死霊の釜の真横に据えろとの示唆が出た次第で御座います。

拝領するはずの女の事も忘れた頃、と或る男性からメールが参りました。例の女の代理人である弁護士との事でした。

曰く「(女性の名前)はある事件に関わり、拘留されています。初犯ですが実刑となる可能性が高く、彼女から貴方への連絡を託されたので添付させて頂きます」──そんな事務的な文面に、女の性質を表すような小汚い手書きの手紙が、画像として添付されていました。

「赫々云々(かくかくしかじか)の理由から御縄を頂戴しました。従って悪霊の呪物は受け取れません。預かって下さい。私の容疑が晴れて解放されるよう、術の執行を頼みます。御願いします! お布施は出てから必ず払います。」

キューバの術師は結果を見通して居ったのです。悪霊の呪物をあの女に渡したくないという潜在的な意識があったせいか、私は実に清々しい気分で御座いました。女に対する憤りは、血約死霊の憤りであり、あの女に会って拝領の契約を交わした時点から、悪霊の呪縛が女に取巻き始めたのだと今と成れば思うのです。わざわざ死霊に伺いだてる必要もありませんが、結果的に女は拝領を決意したその頃合いから、前述の通り悪霊に喰われる運命にあったと存じます。己の分際を弁えない体たらくが招いた、悔やんでも悔やみ切れない終着地と成ってしまいました。

当地インドシナや、其の大元であるスィーヴィジャヤ国(現在のインドネシア)に伝わる悪霊呪物「ピータイフン(インドシナでの名称)」や「ミンヤック・クヤン(スィーヴィジャヤの名称)」といった、不運な死を遂げた人物の肉体を焼き、それを搾り得た油を詰めた壺。そして前述の「Ndoki:ンドキ」なぞは、安易に一般人が得るものでは御座いません。

拝領した暁に得する者は、操作に長ける事が前提。そして其の類の霊に好まれる人間で有る事。操作が長けるのみでは、遣られてしまう事もあります。実際は好まれなければ全て遣られてしまうわけで、操作云々は爾後の関係のみに有効です。兎にも角にも、途轍もなく厄介な呪物という事で御座います。

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